酵素は、人間や動物、植物などすべての生き物が生命活動を行うために必要な、消化・吸収・代謝などの化学反応を促進するもので、タンパク質、油脂、でんぷんなどの特定の有機物のみを分解する働きがあります。
しかしながら、酵素自体は触媒作用を持つタンパク質のため、加熱やpHの変化によって変性して活性を失う(失活)といった特徴があります。

洗剤に酵素を配合することで、洗剤の主成分(界面活性剤)の作用を助け、洗浄力をさらに高める働きをします。
たとえば、洗剤の界面活性剤だけでは簡単に落ちないエリやそで口の汚れに含まれているタンパク質汚れは、タンパク質分解酵素を配合すると酵素が汚れを分解して落としやすくしてくれます。

代表的な酵素の種類
・プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)
・リパーゼ(脂肪分解酵素)
・アミラーゼ(デンプン分解酵素)
・セルラーゼ(繊維分解酵素)

酵素の効果/働き
洗剤の主成分である界面活性剤は、汚れ、衣類、水の界面に作用することで汚れを衣類から引きはがし、水の中へ取り出します。酵素の作用は界面活性剤とは異なります。例えばタンパク質汚れは、アミノ酸が鎖状につながっている状態にあります。その鎖を切断する効果を発揮するのが、プロテアーゼです。酵素の働きとは、ハサミで鎖を切断するように分子同士の結合を切るイメージです。
酵素は、人や動物の生体内で作用するものなので、効果を最大限に発揮させる温度や作用時間があります。通常洗濯でも効果はありますが、30~40℃のぬるま湯に1~2時間浸け置きすると、より効果が高まります。液体の場合は汚れの箇所に直接塗布することも効果的です。

*注意点*
ウールやシルクなど、動物性繊維の主成分はタンパク質です。プロテアーゼが配合された洗剤で長時間浸け置き洗いをすると、生地にダメージを与えたり、風合いを損ねたりする恐れがあります。ウールやシルクの衣類を洗うときは、プロテアーゼを配合した洗剤は使用しないほうが無難です。
市販の酵素配合洗剤の成分の表示には、「酵素」としか表記されていないので、用途などを確認の上使用してください。

本記事は、各種文献を参考に作成しました。