事故内容
品名
フリースジャケット
状態
家庭で洗濯をして折りたたんだ状態で長期保管していたところ、袖口のパイピング部分と接触していた袖に色移りしていた。
素材
本体:ポリエステル100%
パイピング部:ポリエステル95%、ポリウレタン5%
取扱い表示
処理方法
家庭での洗濯
製品特徴と原因
製品を畳んだ状態で保管された時に、濃色の染料が淡色部に移行することがある。
ポリエステルを染色する分散染料は、合成染料の中で唯一、熱(温度)の影響により昇華*する性質がある。分散染料は水に溶けない染料のため、130℃前後の熱を加えるてポリエステル繊維の中に押し込むようにして染色するため、再び熱が加わると繊維内部に取り込まれていた染料が繊維表面に移動し、堅ろう度の低下を招く。
例えば、輸送や保管環境中の熱(温度)、仕上げのセット熱や乾燥時の熱(温度)など様々な影響を受けて分散染料が繊維表面に引き出され、それが汚染トラブルの原因になる。
分散染料はポリウレタンに対する親和性が高いため、特にポリウレタン混素材では昇華染料がポリウレタンに吸着し、その汚染した色素が色移りの原因となる。
今回のケースでは堅ろう度不良の場合、保管条件や取扱い条件による場合などが考えられる。
*昇華:固体が液体にならずに気体になること
防止方法
アパレル
- 分散染料の中でも昇華しにくい染料を選定する。
- 染色後、十分な還元洗浄を行い、表面染着した染料を除去する。
- コンテナや倉庫保管時の温度管理が難しい場合は、濃淡部分が直接触れないような工夫をする。
- 淡色のポリエステル素材と濃色のポリエステル・ポリウレタン混素材の組み合わせは避けることが望ましい。
- 濃色記事の昇華堅ろう度を事前に確認する。
- 保管時の取扱いについての注意表示を付けることが望ましい。
消費者
- 昇華は徐々に進行するため、濃色と淡色が接触しないように保管する。
- 常温でも長期間保管されると汚染する可能性があるため注意する。
クリーニング
- 受付時に特に、濃淡配色製品は淡色部分の汚染がないかを事前に確認する。
- 乾燥やアイロン、プレス仕上げなどは取扱表示に準じて行うこと。
事故防止対策部会の考え方
ポリエステルの濃淡配色製品は分散染料の特性を理解した上で、染料選定及び染色工程を実施すること。
製造時の仕上げセット温度、クリーニング時の乾燥温度・時間やプレス仕上げ温度など熱(温度)の影響に注意すること。
また、高温になる環境および重ねた状態で圧力がかかる環境などでの長期保管は色移りの恐れがある旨の注意表示を付けることが望ましい。